りんご文庫レポート(NO-1-160417)

「子どもの本との出合い」

                                                   

 私の子どもが2歳になったころ、勤め先の職場へ来ている本屋さんに「よい本がありまかか」と聞きました。「『こどものとも』という月刊誌があるよ」と教えられ、早速予約しました。その本の付録の中に「絵本の与え方」という松居直さんの文章がありました。そこには「絵本は大人がこどもに読んであげる本です。こどもに読ませる本ではありません。絵本をとおしてこどもは豊かなことばと出会うことができます。そして、画家が心を込めて描いた絵は子どもの感性を豊かにします。小さい頃から本を読んでもらった子どもは人の話を聞くことができます。学校で先生の話を聞くときにこれはとても大事なことです。


 大好きな親に、すばらしい絵とすばらしいことばの絵本を読んでもらって、一緒に本の中を旅をして共有の時間をすごす。こどもにとってこんなにうれしいことはありません。より多くの喜びと楽しみを親から与えられた子は、成長したとき、自らの幸せをしっかり築き上げ、そして人とそれを分かちあえる人間に育つのだと思います。」というような内容でした。


 絵本がこのような大事な存在であるとはこのときまで私は考えてもみませんでした。ただ、私が小さいころ昔話をたくさん聞いて楽しかったので、わが子にも楽しい思いをさせてやりたいと思っただけでした。
松居さんのことばに出会って、私は子どもの本に目覚めたといえるかもしれません。当時私は勤めていて子どもと接する時間は、私が帰ってきて寝るまでの2〜3時間しかありません。この大事な時間に毎日本を読んでやろう、と決心しました。


 最初は1ヶ月間毎日同じ本を10分くらいずつ読んでいました。(本がなかったから)当時の「こどものとも」の中には『ぐりとぐら』『だるまちゃんとてんぐちゃん』など、今でもロングセラーとなっている本が次々と出版されました。
子どもと一緒に読んでいるうちに、わたしもだんだん絵本の魅力にとりつかれてしまいました。絵本はかわいらしい絵ばかりだろうと思っていたのですが、芸術的なすばらしい絵がたくさんあるのです。驚きでした。すばらしい絵と心地よい文章は声にだして読んでいる私の心深く入り込んできました。子どもより私のほうが感動していました。
読んだあとしんみりと静かにしていたい本、あっは、あっはと笑いながら読んで終わってからもしばらく笑い転げている本など、本当に楽しい時間でした。


 「いやいやえん」は何回も読んだ思い出に残っている本です。
時には私の気持ちに、教育的な欲が出てくるときもあり、そんなときには松居さんの言葉を思い出しては、「欲を出さずただ楽しもう」と自分に言い聞かせたものでした。今は、私は「こどものとも」や「かがくのとも」に育てられ、なんと運のよい出会いができたことかと、教えてくれた本屋さんにも感謝しています。


 私の子どもたちは現在親となり、子どもに本を読んでやっています。きっと楽しかったからだろうと思っています。
子どもと本を読んできて、私が子どもの心理を教えられ、心を癒してもらい、育ててもらった、と思っています。
子どもと本を読んでいなかったら、もっと子どもを傷つけ、私も毎日いらいらして子育てをしていたかもしれません。寝る前に本を読んで、子どもも幸せになり、親も一日を反省して心の切り替えができる。子どもの本はそんな役目をしてくれるのです。


 今ひとつ反省していることは、私は昔話をたくさん読んでやらなかったことです。当時私は創作本に興味があったので、気持ちがそちらに強く動いていました。
昔話には人生がいっぱい詰まっています。若いお母さん、子どもに昔話もたくさん読んでやってください。楽しい思いがいっぱい残ることを願っています。


                           りんご文庫   宮下すわ子(C−2004)

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